区分所有マンションの関係法律等の文言で、区分所有者と組合員の区別を明確に説明している文が見当たらない。皆さんは理解しておられるのだろうか。あらためて考察してみよう。
区分所有法の成立は、一つの建物の中に複数の住戸が存在する建物が建設されるようになり、その中の各住戸を利用するためには共同で利用する部分(廊下、階段、共用設備など)が存在することとなったことから、権利関係を整理するために、民法の特別法として成立したようだ。それまでは、民法では一つの物件については一つの所有権しか認めず、共有という形式しか認めていなかった。共有ではその特定の部分ではなく、全ての部分が共有者のものとなるので、複数の住戸を個別に特定の所有者権を認めることが出来なかった。そこで、一物一権規定の例外として、一つの建物の中でもそれぞれ独立して利用使用できる複数の住戸が存在する場合に、それぞれの住戸に独立した個別の所有権を付与する規定を、民法の特別法として区分所有法を規定した。
背景には、高層住宅建設の技術的発達で利便性の高い土地を立体的に利用することで、より安価に住宅を所有しやすくさせるという政策があったのであろう。
ここで、注目すべきは一つの建物の中の各住戸は独立して使用出来るものの、そのためには共用部分として集合玄関、廊下、建物など建物の部分や給水、排水、電気、ガス等の設備が存在することになった。それぞれ外部と行き来したり、生活するための各設備をそれぞれの住戸が単独で設けたりするには不合理であり不経済となる。だから外部から各住戸に至るまでは共用部分とし、各所有者全員で利用できるものとした。ここで必要となるのがこの共用部分の維持管理の問題である。
ここで少し整理する。複数の住戸を持つ一つの建物。これを区分所有法では区分所有建物と呼んだ。今でいう分譲マンションである。その建物を分界すると、敷地、建物、設備と分けられるが、所有権の権利関係からみると、それぞれの各住戸、これを専有部分というがこれは独立した区分所有権という所有権がある。その専有部分を利用使用する権利は所有者に帰属し、その専有部分を維持管理する義務も同区分所有者がその責を負う。
他方、共用部分については、全区分所有者が利用使用し、維持管理義務についても全所有者がその責を負うこととなる。
ここに出てくる共用部分の維持管理というのが、区分所有法第3条にいう、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」という規定にあたる。現実には標準管理規約にいう、管理組合がその団体である。そしてその管理組合の構成員が組合員ということになるのであろう。
区分所有法は法律であり抽象的すぎる。それを具体的な実行可能な手続に表わしたものが標準管理規約ということになろう。そこで区分所有者と組合員の関係をみると、標準管理規約第30条で「組合員の資格は、区分所有者となったときに取得し、区分所有者でなくなったときに喪失する。」の規定しかない。そのまま理解すると、一組合員は複数の共有者でも良く、法人でも良いことになろう。
このような、あまい曖昧な規定を設けていることが、分譲マンションの仕組を崩壊させてきていると思われる。区分所有=分譲マンションの仕組の要(かなめ)は共用部分の維持管理=管理組合の活動である。共用部分の維持管理が出来なくなれば、少しの時間差で専有部分の利用使用も出来なくなり、この仕組が崩壊する。
ここで明確に管理規約として、共用部分の維持管理を目的とする管理組合活動の構成員として一区分所有区を代表として一名の自然人を組合員としなければならないことを明示して欲しい。且つ組合員はその区分所有者が負担しなければならない管理費等の費用負担の責任を負い、又共用部分の維持管理として管理組合の活動に参加できる行為能力及び意思能力のある人である必要がある。このことは欠くことのできない重要な義務責任である。
昨今、管理組合の活動が低下していることに因み、法改正など何度も試みておられるようですが、本当の原因はここにあるのではないだろうか。